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2008年5月 5日 (月)

12夜ショート・ショート「花の浅草、下町観光」

花の浅草、下町観光

 はぁ、まんず、これが浅草だっぺ。
 ほれ、みてみろや、カアチャン。
 よおくまあ、こんなにいっぺえ人が集まるもんだべや。
 今どっからか湧いてきたと思ったら、もう次が湧いてるでよう。
 まさか、おんなし連中がおんなしとこグルグル回ってるわけではねえだろうけっども、はぁ、それにすたってえれえもんだ。
 こらぁ、毎日毎日がお祭りだぁね。
 なに? キョロキョロすんなて?
 アホこくでねえ。
 おらたちゃ見物に来てるんでねえか。
 キョロキョロしねえで、なにをするだ。
 こっただ珍しい見せ物、なかなかお目にかかれるもんでねえぞ。
 しっかり目え開いて、よーく見るだ。
 なんも恥ずかしいことなんかねえだぞ。
 恥ずかしいのは、むこうだべが、ん。
 ほーれ、このカンザシ、おめに似合うんでねえだか。
 今どき、クサツの温泉場にだって、こんな毒々しい土産ものは珍しいだ。
 これこそ浅草っちゅうもんだべや。
 記念におめにひとつ買ってやるべ。
 --なに? 腹巻きからゼニ出すな?
 いちいちウルセエっぺ。
 この腹巻きがナウいんでねえか。
 トラさんとソックリにわざわざあつらえただぞ、この日のために。
 せっかく浅草へ来るっちゅうに、まーさかカルチェの財布じゃなんめえよ。
 TPOちゅうのも考えにゃなんね。
 まして、アメリカン・エキスプレスなんか間違っても出すでねえだぞ。
 それこそ笑いもんになるだ。
 女ちゅうのは、どうもその辺がわがらねえがら困るだ。
 考えてもみろや。浅草ちゅうたら東京の中の東京だべ。
 それがなんでこんなふうにしてっか、おめにわがっか?
 雷門のチョウチンがいくらでかくたって、そんなもん今どき誰がうれしがるかよ。
 人形焼きだの雷オコシだの芋ヨウカンだの、そっただものジイチャンだってバアチャンだって欲しがりゃしねって。
 実際たいしてウメえもんじゃねえしな。
 それぐれえならミスター・ドーナッツのほうがよっぽどマシだっぺ。
 もっとウメえもん毎日食ってるでねえが。
 このカンザシだって見てみろ。セルロイドと色紙でできてるだ。
 それだけじゃねえだぞ。
 あの有名なロック座や演芸ホール、木馬館や花やしきを見てみろや。
 あのウラブレた雰囲気! 
 あれが演出でなくて、なんだっていうだ!
 ようするに、あれだ。
 日光江戸村に行ったっぺ。
 あれとおんなしだな。
 なに? おらがストリップを楽しそうに見てた?
 そらぁ、おめ、礼儀っつうもんだべ。
 いかにもつまんなそうに見てたんじゃ、踊り子がかわいそうってもんだ。
 だいいち、おら、今さらストリップなんぞ見なくたって、裏ビデオ──いや、その、まぁいろんな楽しみがあるだ!
 よーするに、浅草ってとこは「うらぶれゴッコ」をするとこだべ。
 それも昭和30~40年代の、な。
 落後の貧乏話を喜ぶ心理といっしょだな。
 すっかすマア、浅草ちゅうとこは、つくづくアナクロだべ。
 うれしくってゾクゾクして来るだよ。
 まるでハア、タイム・マシーンにでも乗ったみてえだ。
 おめも、これが楽しめるようになったら一人前だぞ。
 こゆのーを「よい御趣味」ちゅうだ。
 なに? ほんとに浅草の人たちはわかってやってるのが、だって?
 わがってやってるに決まってるでねえが、バガッ!
 ここは東京だぞ! おらたちの田舎とはわけが違うだぞ。
 これが都会のセンレンされたセンスちゅうもんだべが。

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