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2008年4月 3日 (木)

29夜 ブック・レビュー『もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品』

もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 (ABCアート・ビギナーズ・コレクション)

見識に感銘

かねがね「コレクター」なるものの胡散臭さには辟易していましたが、実はそれ以上に、コレクターを持ち上げる美術界の人たちに疑問を感じておりました。佐藤氏の見識は、その点についての疑義を浮き彫りにしており、これこそが美術批評というものの本義であろうと感服しております。
日本美術のコレクションではボストンをはじめ、アメリカの美術館は際立ったものがありますが、そのほとんどは近世から現代にかけての「個人コレクター」によるものです。プライス・コレクションも、もちろん同類です。
彼らに言いたい。「ノブレス・オブリージュ」の精神を学べ、と。
アメリカという国の文化がいかに貧相で浅薄なものであるか、自覚しているからこそ金にあかせた美術館を(劣等感かも?)つくるのか?

ジョウ・プライス氏は、ぜひその有り余る資金を日本の誰かに提供して、日本に心遠館を造るべきであったと思います。若冲を日本に返してほしいと切実に思います。たまに見せびらかすだけというのは勘弁して欲しいものです。

かつて、ヨーロッパの貴族や富豪たちは、資力にものを言わせて世界の美術品をおのれのものにするだけではなく、その資金で文化育成の支援をしたものです。
いまやそういう「パトロン」はほとんどいなくなり、「コレクター(もしかすると投資家)」ばかりになってしまいました。

コレクターというものがいかに利己的なものか、私たちは彼らの資金に目がくらむことなく、公正に評価すべきであろうと思います。
その点、佐藤氏の冷静な視線は、出展のエサに惑わされることのないものできわめて貴重なものと思います。
ぜひ、本書を読み、著者のコメントから本質を読み取っていただきたい。

もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 (ABCアート・ビギナーズ・コレクション)

著者:佐藤 康宏

もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 (ABCアート・ビギナーズ・コレクション)

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